健康影響
質 問
送電線の近くに家を買うのですが、大丈夫でしょうか?
回 答
磁界の強さは、送電線や配電線の直下の地上高1mで最大20マイクロテスラ(μT)、変電所の敷地と一般の土地との境界部分で最大4マイクロテスラ(μT)程度であるため、磁界の短期的な影響については、国際非電離放射線防護員会(ICNIRP)ガイドラインの磁界ばく露制限値200マイクロテスラ(μT)より小さいことから健康影響はないと言えます。
一方、このような場所に長期間住むということで考えれば、長期的な影響の視点で考える必要があります。
世界保健機関(WHO)が2007年6月に公表したファクトシート№322「超低周波の電界及び磁界へのばく露」によれば、複数の疫学研究のデータをプールした分析で、0.3~0.4マイクロテスラ(μT)を越える超低周波磁界の長期的ばく露により小児白血病が倍増するという一貫したパターンが示されています。しかし、調査対象者の偏り等の研究手法上の問題があること、生物物理学メカニズムがないこと、および大多数の動物研究で影響が示されていないことから、全体として因果関係と見なせるほど強いものではないと結論付けられています。
また、小児白血病以外の小児がん、成人のがん、うつ病、自殺、心臓血管系疾患、生殖機能障害、発育異常、免疫学的変異、神経行動への影響、神経変性疾患についても数多く研究されていますが、いずれも磁界ばく露との因果関係を示す証拠は小児白血病よりも更に弱いと結論付けられています。
これは、長期的なばく露による健康影響が完全に否定されたことを意味するわけではありませんが(科学の世界において、健康影響全くないことを証明することは理論的に不可能)、健康影響の可能性としては非常に低いものと解釈することができます。
⇒参考資料
☆ WHOファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」(日本語訳)PDFファイルダウンロード
☆ WHO環境保健クライテリア№238「超低周波電磁界」(日本語訳) PDFファイルダウンロード