よくある質問と回答
2-1電磁波とは?電磁界とは?
「電界」と「磁界」をあわせて「電磁界」といいます。「電界」は電圧がかかっているもののまわりに、「磁界」は電気が流れているもののまわりに発生します。
電界・磁界・電磁界は工学分野、電場・磁場・電磁場は物理学分野での用語ですが、両者はともに英語のEMF(ElectroMagnetic Fields)に由来しており、同じ意味です。
電磁界は私たちの身のまわりのいたるところに存在していますが、目には見えません。電磁界は送電線などの電力設備や家電製品など電気を使用する全てのものから発生します。また、テレビやラジオ、携帯電話などは、高周波電磁界(電波)を利用して情報通信を行っています。
自然界にも電磁界は存在しています。電界は大気中の雷雲の形成によって発生します。静電気も電界によって起こる現象です。また、磁界は磁石の周辺に存在します。地球がつくる磁界(地磁気)により方位磁石は北の方角を示し、鳥や魚は方角を知ります。
電磁界は周波数が高くなると、電界と磁界が絡み合うようにして、次々と波として遠くに伝わる性質が強くなっていきます。この波のことを「電磁波」といいます。電磁界情報センターでは、周波数に関わらず、電界と磁界をあわせたものはすべて 「電磁界」と定義しています。
なお、周波数の高い電磁界(高周波電磁界・無線周波電磁界)などは、無線通信など波としての利用を表現する場合にのみ「電磁波」あるいは「電波」という用語を用いることもあります。
送電線や家電製品などから発生する電磁界(低周波電磁界)については、一つの波の長さは5000km~6000kmにもなるため、普通の生活空間で考えた場合、波としての性質はほとんど無視することができるので、物理的観点からは「電磁波」ではなく「電磁界」と表現する方が適切です。
しかし、一般の方々への情報提供においては、分かりやすさの観点から、当センターのウェブサイト、パンフレット、各種イベント告知やプレゼンテーションにおいては「電磁波」と表現しています。
続きを読む
2-2電界とは?
電気のある空間(場所)を電界といいます。
電界は電圧差が生じることで発生します。例えば、コンセントにプラグが差し込まれた家電製品の電源コードのまわりには、製品のスイッチがON(入)になっていなくても電界が発生しています。
一般に電界の強さは距離とともに急激に弱くなります。
電界の単位にはV/m(ボルト/メートル)が使用されます。
続きを読む
2-3磁界とは?
磁気のある空間(場所)を磁界といいます。
磁界は電気が流れることで発生します。家電製品はスイッチがON(入)になって初めて磁界が発生します(ただし、待機電力が必要な製品はスイッチをONにしなくても若干の磁界は発生しています)。
一般に磁界も距離とともに急激に弱くなります。
磁界の単位はT(テスラ)といいますが、通常は身のまわりの磁界の大きさに合わせ、µT(マイクロテスラ)が使用されます。(1µTは百万分の1T)
続きを読む
2-4電磁波(電磁界)の種類と作用とは?
電磁波(電磁界)は、電離放射線と非電離放射線に分けられます。
送電線などの電力設備や家電製品などから発生する低周波電磁界、IH調理器などから発生する中間周波電磁界、テレビ放送や携帯電話などの通信に利用される高周波電磁界(電波)などは全て非電離放射線に属しています。また、エックス線やガンマ線などは極めて高い周波数の電磁界で、細胞を構成する分子の原子結合を破壊することによって電離作用(原子から電子を引き離すこと)を起こさせるのに十分な光子エネルギーを持っているので、電離放射線と呼ばれています。電離放射線は物質にあたった時に、その物質を電離作用させる能力があるため、体を構成しているDNAの鎖を分断したり、組織を傷つける能力もあることから、がんを引き起こす可能性があります。
非電離放射線は、電離放射線のような電離作用を起こすエネルギーを持ちません。したがって、ばく露されても細胞内の遺伝子に悪い影響を与えることはありません。
電磁波(電磁界)のエネルギーは、下の表のように波長が長いほど小さくなります。
続きを読む
2-5自然界に存在する電磁波(電磁界)とは?
代表的な例としては地磁気や落雷の放電によって発生する磁界が存在します。
地磁気の大きさは場所によって異なります。赤道付近では約30µT(マイクロテスラ)、北極や南極では約60µTです。ただし、地磁気は磁界の向きが常に一定の静磁界といい、電力設備から発生する磁界のように磁界の向きが変動するものとは異なります。また、落雷による放電の電流は数十~数百kA(キロアンペア)となり、その近くでは瞬間的に非常に大きな磁界が発生します。
一方、電界は電気を帯びた微粒子(電荷)によって作られます。冬の乾燥した日、セーターなどを脱ごうとしてパチパチと音がする静電気は、電界の作用によるものです。
続きを読む
2-6電界・磁界の単位とは?
電界の強度を表す単位はV/m(ボルト/メートル)、磁界の強さを表す単位としては、A/m(アンペア/メートル)が用いられます。
ただし、一般的に磁界の強さとは磁束密度(単位面積当たりに通っている磁力線の量)を意味しており、その場合は、T(テスラ)、G(ガウス)が用いられています。
テスラとガウスの関係は、
1G=100µT(1ガウス=100マイクロテスラ)
1mG=0.1µT(1ミリガウス=0.1マイクロテスラ)
です。SI単位系による磁界の強さを表す単位はTです。
続きを読む
2-7電磁波(磁界)の発生源が複数あれば、磁界の強さは足し算になるのですか?
電磁波(磁界)はベクトル量なので単純な足し算にはなりません。
また、発生源が小さい場合、全身ではなく局所的なばく露となりますので、空間的な分布も考慮しなければなりません。
続きを読む
2-8 SAR(比吸収率)とは?
SAR(比吸収率:Specific Absorption Rate)とは、生体が100kHz(キロヘルツ)以上の高周波電磁界(電波)にさらされることによって、単位質量あたりの組織に単位時間に吸収されるエネルギー量をいいます。
単位はW/kg(ワット/キログラム)で表されます。
体全体が電波にさらされた場合で、熱作用により人体に有害な影響が及ぼされるのは、全身平均SAR が約4W/kg以上であることから、電波防護指針により、労働環境では10倍の安全率を考慮して全身平均SARの基準値を0.4W/kgとしています。一般環境では、そこからさらに5倍の安全率を適用して、0.08W/kgと定めています。
また、電波のエネルギーが身体の局所に集中して吸収されるような場合(例えば携帯電話使用時には頭部に集中します)、その局所SAR で2W/kgを一般環境の基準値として定めています。
続きを読む
2-9電磁波(電波)の単位とは?
電磁波(電波)の強度を表す単位は、電界強度のV/m(ボルト/メートル)や磁界強度のA/m(アンペア/メートル)、または電力密度のmW/cm2(ミリワット/平方センチメートル)で表されますが、以下の関係式が成り立つので1つの値がわかれば、他の2つの値も計算できます。
電力密度(W/m2) = 電界強度(V/m)2 ÷ 377 = 377 × 磁界強度(A/m)2
なお、生体は、周波数が約100 kHz(キロヘルツ)以上の非常に強い電波を浴びると、そのエネルギーの一部は体内に吸収されて、熱となって体温が上昇します。これを熱作用といいます。体内の熱発生の指標として、単位質量あたりの組織に単位時間に吸収されるエネルギー量はSAR(比吸収率:Specific Absorption Rate)で表し、W/kg(ワット/キログラム)という単位が用いられます。
続きを読む