電車や新幹線などの電気鉄道は、架線(電気を電車に流すための電線)から直流交流の電気が供給されて動きます。その架線や車載機器からさまざまな周波数の電磁波(静磁界低周波磁界中間周波磁界)が発生しています。また、電車の走行状態(加速、ブレーキなど)によって使用する電力が短時間(数秒~数十秒)で急激に変動するため、発生する磁界の強さも急激に変動します。

電車から発生する磁界の大きさ

電車から発生する磁界を国際的に定められた測定方法に従って測定した例では、電車内の車両床面上での静磁界で1mT(ミリテスラ)程度、低周波磁界(数Hz(ヘルツ)程度)で100µT(マイクロテスラ)もありますが、その他の場所では、数10Hzの低周波磁界で0.1µT程度、数100Hz~数kHz(キロヘルツ)の中間周波磁界で、0.01~0.1µT程度と報告されています。

いずれにおいても人への健康影響を考慮して国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が公表する国際的なガイドラインのばく露制限値よりも小さい値でした。

電車から発生する磁界の人への影響はこちら をご覧ください。

電車の電気設備から発生する磁界規制

国土交通省は、電車(鉄道)の電気設備について、経済産業省が定める電力設備の低周波磁界に関する規制と同等の規制を導入しています。

リニア新幹線

現在、東京―大阪間のリニア中央新幹線が建設・計画されています。

走行の仕組み

リニア新幹線(リニアモーターカー)の推進方法には磁気浮上式鉄輪方式がありますが、リニア中央新幹線では磁気浮上式が採用されています。 リニア中央新幹線は線路にあたるガイドウェイの上を走行します。このガイドウェイには車両を前に進める推進コイルと、車両を浮かせ導く浮上・案内コイルが設置されており、電気を流すことでこれらのコイルは電磁石になります。

サンプル

ガイドウェイ拡大図

一方、車両には超電導磁石が取り付けられています。ガイドウェイの推進コイルに電流を流すと磁界(N 極、S極)が発生し、車両の超電導磁石との間で、下図のようにN極とS 極の引き合う力と、N 極同士・S 極同士の反発する力が生じます。ガイドウェイの推進コイルに流す電流を速度に応じて切り換えることにより、常に同じ方向に力が働き、車両が進みます。

サンプル

推進コイル

車両がガイドウェイを高速で通り過ぎる際に、ガイドウェイの浮上・案内コイルには車両の超電導磁石による電磁誘導により電気が流れ電磁石になります。これが、左上図のように車両を下から押し上げる反発力と、上に引っぱる吸引力の元となり、車両が浮き上がります。

また、左右の浮上・案内コイルは、電線により結ばれ、車両が中心からどちらか一方にずれると、左下図のように車両の遠ざかった側に吸引力、近づいた側に反発力が働き、車両を常に中央に戻す力が生じます。

サンプル

浮上・案内コイル

リニア中央新幹線から発生する電磁波の大きさ

リニア中央新幹線から発生する電磁波(磁界)は、静磁界と、走行速度に応じて異なる周波数の低周波磁界です。リニア新幹線から発生する磁界の強さについて、山梨リニア実験線での走行試験における実測結果がJR東海のウェブサイト1)で公表されていますので、その内容を紹介します。 いずれの実測値も、ICNIRPが公表する国際的なガイドラインのばく露制限値を下回っています。

車内での測定結果(自車両からの磁界)

相対速度 最大値測定箇所 最大磁界発生時の周波数 最大測定値 国際的なガイドラインの
ばく露制限値
0km/h 貫通路部連結面から
2.4m床上0.1m
0Hz 1.33mT 400mT

車内での測定結果(自車両からの磁界)

相対速度 最大値測定箇所 最大磁界発生時の周波数 最大測定値 国際的なガイドラインの
ばく露制限値
1,000km/h 客室内座席部床上1m 12Hz 0.11mT 0.44mT

沿線での測定結果

車両速度 測定箇所 最大磁界発生時の周波数 最大測定値 国際的なガイドラインの
ばく露制限値
0km/h
(停車時)
線路脇4m 0Hz 0.19mT 400mT
高架下8m 0.02mT
500km/h
(走行時)
線路脇4m 6Hz 0.19mT 1.22mT
高架下8m 0.02mT

リニア中央新幹線から発生する磁界の人への影響はこちらをご覧ください。

リニア中央新幹線の電気設備から発生する磁界規制

国土交通省は、リニア中央新幹線の電気設備から発生する低周波磁界について、経済産業省が定める電力設備の低周波磁界に関する規制と同等の規制を導入しています。

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