送電線などの電力設備や家電製品、携帯電話、携帯電話基地局などから発生する日常環境で遭遇する低レベルの電磁波(電磁界)ばく露が原因で、皮膚への症状(発赤、チクチク感、焦熱感)や神経衰弱症、自律神経系症状(倦怠感、めまい、動悸)などの不特定の症状が出ると訴える人がいます。そのような自覚症状を一般的に「電磁過敏症(電磁波過敏症)(EHS : Electromagnetic Hypersensitivity」と呼んでいます。
しかし、世界各国でこれまでに数多く実施された電磁界ばく露と「電磁過敏症」の関係を調べた研究では、その関連性は確立されていません。
二重ブラインド法とは
二重ブラインド法とは、臨床試験で薬の効果を評価するひとつの方法です。患者も医師も本当の薬か偽薬かわからない条件で、薬を投与してその効果を判定し、その後で第三者が薬と偽薬がそれぞれどの患者に投与されたか開示することにより、患者や医師の先入観を排除して客観的に薬の効果を評価する方法です。
電磁界ばく露を評価する場合、実験を実施する研究者と被験者の双方に電磁界ばく露の有無を知らせずに、被験者が電磁界ばく露の有無を感知しているかなど、さまざまな生理的反応の測定を行う方法です。実験終了後に第三者が実際に電磁界にばく露されていた期間のデータを開示し、被験者の感知や生理的反応と電磁界のばく露状況を照合した分析を行います。
このような二重ブラインド研究手法を取り入れた実験的研究では、「電磁過敏症」を訴える人とそうでない人との間で電磁界を感知する能力に差がないことがわかりました。具体的には、電磁界にばく露された状況では、ばく露されていることを感知できず、生理的反応を含む症状も生じない場合がある一方で、電磁界にばく露されていない状況では、ばく露されていると認識し、生理的反応を含む症状が生じる場合があるという結果が得られています。