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リニア鉄道の方式として、磁気浮上式と鉄輪式があります。東京と大阪の間で建設が計画されているリニア中央新幹線は磁気浮上式の採用が決定しています。
リニアモーターカーは線路にあたる「ガイドウェイ」の上を走ります。このガイドウェイには車両を前に進める「推進コイル」と車両を浮かせ導く「浮上・案内コイル」という、3つの働きをするコイルが設置されており、電気を流すことでこれらのコイルは磁石になります。
一方、車両には超電導磁石が取り付けられています。超電導とは、特定の金属や化合物などの物質がとても低い温度に冷却されたときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象をいい、超電導磁石とはこの性質を持った超伝導体を用いた磁石です。たとえば、実用化されている超電導磁石のほとんどはニオブチタン(NbTi)で構成されていますが、これは摂氏マイナス269 度の液体ヘリウムに浸して冷却すると超伝導状態になります。超伝導状態になったコイルに電気を流すと、電気抵抗がないため、コイルのなかを減衰することなく永久に流れ続け、強力な磁界を発生し続けます。
ガイドウェイの推進コイルに電流を流すと磁界(N 極、S極)が発生し、車両の超電導磁石との間で、右図のようにN極とS 極の引き合う力と、N 極同士・S 極同士の反発する力が生じます。ガイドウェイの推進コイルに流す電流を速度に応じて切り換えることにより、常に同じ方向に力が働き、車両が進みます。
車両がガイドウェイを高速で通り過ぎる際に、ガイドウェイの浮上・案内コイルには車両の超電導磁石による電磁誘導により電気が流れ電磁石になります。これが、左上図のように車両を下から押し上げる反発力と、上に引っぱる吸引力の元となり、車両が浮き上がります。
また、左右の浮上・案内コイルは、電線により結ばれ、車両が中心からどちらか一方にずれると、左下図のように車両の遠ざかった側に吸引力、近づいた側に反発力が働き、車両を常に中央に戻す力が生じます。
リニア新幹線から発生する磁界の強さについて、山梨リニア実験線での走行試験における実測結果が、JR東海のホームページ1)で公表されていますので、その内容を紹介します。いずれも、最大測定値は車両の超電導磁石由来の磁界であると考えられます。なお、自車両(乗車中の車両自体)からの磁界については、超電導磁石周辺に磁気シールドを施すことにより、大きく低減されていると考えられます。
車両速度 | 測定箇所 | 最大周波数 | 最大測定値 | ICNIRP ガイドライン値 |
---|---|---|---|---|
0km/h (停車時) |
線路脇4m | 0Hz | 0.19mT | 400mT |
高架下8m | 0.02mT | |||
500km/h (走行時) |
線路脇4m | 6Hz | 0.19mT | 1.22mT |
高架下8m | 0.02mT |
相対速度 | 最大測定箇所 | 最大周波数 | 最大測定値 | ICNIRP ガイドライン値 |
---|---|---|---|---|
1,000km/h | 客室内座席部 床上1m |
12Hz | 0.11mT | 0.44mT |
相対速度 | 最大測定箇所 | 最大周波数 | 最大測定値 | ICNIRP ガイドライン値 |
---|---|---|---|---|
0km/h |
貫通路部連結 |
0Hz | 1.33mT | 400mT |
超電導磁石以外に、ガイドウェイに設置するコイルおよびそれに接続するケーブルから磁界が発生しますが、超電導磁石による磁界に比べて非常に小さいものです。
また、車内の空調や照明等の電源はガイドウェイの専用コイルと車両に設置している専用コイル間で、電磁誘導作用を利用して非接触で集電していますが、これにより発生する磁界の強さはICNIRPガイドラインの1%未満です。2)