日常生活で超低周波の電界および磁界へのばく露は、たとえば、送電線の下に人体が立った場合に起こります。この状況を例に取り、電界および磁界にばく露した時、人体にどのような現象が起きるかは明確に理解されています。

電界に対して起きる現象

静電誘導

右図の例では、電界は送電線と地面の間に発生しています。人体の組織は導電性であるため、電界の中に入ると人体の表面に電荷が移動し、人体内部には電界が誘導され、電流を生じさせます。電界は皮膚など人体表面に集中するため、人体内部の誘導電界は外部電界より5~ 6 桁小さくなります。人体周囲の電界分布は、人体が入ることにより大きく変化しますので、電界測定時には分布を乱さない工夫(測定プローブと人体の距離を十分とる等)が必要です。

磁界に対して起きる現象

電磁誘導

右図の例では、人体軸に垂直な方向に磁界が発生しています。人体の組織の磁気的性質は空気のものと同じであるため、外部磁界と同じ磁界が人体を透過します。外部の磁界強度が時間変化すれば、人体を透過する磁界強度も時間変化します。そうすると、人体には磁界の変化を打ち消すような磁界を発生させる電流(誘導電流と呼ぶ)が生じます。

人体には、そもそも神経や筋肉など活動のために生理的な電流が流れています。もし磁界ばく露により大きな誘導電流が生じれば、その電流により神経や筋肉が刺激されます。送電線などの磁界による誘導電流の大きさは非常に小さく、神経や筋肉を刺激することはありません。

電界と異なり、磁界分布は人体の存在によって乱されませんので、磁界は電界より容易に測定することができます。[▶Ⅰ(5-2)

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