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「ばく露評価」とは、送電線や家電製品などからの電磁界をどれだけ浴びたかを、計算や測定から導き出すことをいいます。導き出された値がガイドラインや規制値より下回っていれば安全が確保されているといえます。
送電線や家電製品などから発生する超低周波電磁界に関して、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)など国際ガイドラインでは、外部から電磁界を浴びた時に、体内に発生する「誘導電界値」を制限値としていますが(「基本制限値」と呼ぶ)、このような体内での値を直接測定することは普通はできないので、その代わりとなる値として、測定可能な外部磁界値を「参考レベル」として定めています。
たとえば、ICNIRPのガイドラインの公衆ばく露においては、50ヘルツの磁界の基本制限値を20ミリボルト/メートル、参考レベルを200マイクロテスラと定めています。これは、「外部磁界を浴びるのを200マイクロテスラまでに抑えておけば、体内での20ミリボルト/メートルの誘導電界の基本制限値を守ることができる」ということを示しています。ただし、200マイクロテスラの磁界を浴びると体内のどこでも必ず20ミリボルト/メートルの誘導電界が生じるわけではありません。参考レベルは、外部磁界に対して人体内の誘導電界が最も効率よく生じるような状況、つまり最悪条件で計算されているので、仮に参考レベルを超える磁界を浴びたからといって、直ちに基本制限値を超過するとはいえません。反対に参考レベル以下の場合は、決して基本制限値を超過することはありません。
もうひとつ注意が必要な点は、ICNIRP のガイドラインでは「参考レベルの値は、ばく露された人の全身についての空間の平均値で評価することが望ましい」と述べている点です。
これは、たとえば、ドライヤーを使用した場合、頭部付近は比較的高い磁界レベルになりますが、お腹や足元の磁界レベルは低いままです。このような場合、ばく露評価値は、最大値を示した頭部付近の値でも足の付近の低い値でもなく、全身を平均することを意味しています。
なお、頭部、腹部、足元など限定した部位での値は「局所ばく露値」と呼ばれています。
測定によるばく露評価の場合、測定方法や測定器について定められた要件を満たして正しく測定を行うことが重要です。自分がどのくらいの電磁界を浴びているのかを評価する場合、測定する人や測定器の種類などで値が異なっては混乱します。国際機関は、測定方法や測定器の精度などについて標準を定めています。
ここでは、十分に高い送電線および路上設置の電力設備を例にとり、磁界ばく露の評価方法を説明します。この2つの例は、図のように人の周辺空間での磁界の均一さに違いがあります。十分に高い送電線から発生する磁界は、地上付近の空間ではほぼ均一です。一方、路上設置型の電力設備には変圧器など入っており、そこから発生する磁界は設備周辺の空間で均一でありません。
国際電気標準会議(IEC)は、「磁界が均一と考えられる場合、磁界の強さは地表または建築物内の床面から1.0メートルの高さで測定することが望ましい。」と定めています。
したがって、送電線の下で地表1メートルの地点で測定器の表示が、例えば2.0マイクロテスラであれば、その付近の磁界はほぼ均一に2.0マイクロテスラと考えられますので、ばく露評価値も2.0マイクロテスラでよいことになります。
IECは「磁界が不均一と考えられる場合、磁界の強さは地表または建築物内の床面からの高さ0.5メートル、1.0メートル、1.5メートルの3点で測定し、その平均をとることが望ましい。」、また、「電力設備の表面、境界、または壁面からの水平距離は0.2メートルとすることが望ましい。」と定めています。
したがって、この電力設備の壁面からの水平距離0.2メートルで、それぞれの高さでの測定値が、たとえば、1.0、3.0、5.0マイクロテスラとすると、3点の平均(1.0+3.0+5.0)/3=3.0が計算され、ばく露評価値は3.0マイクロテスラになります。
なお、ここでは瞬間的な磁界レベルの測定値(スポット測定値)を用いましたが、24時間あるいは1週間など一定期間、連続的に磁界レベル測定した値(連続測定値)を用いてばく露評価する場合もあります。磁界レベルを評価する場合、どのような条件で行われたものかを十分確認する必要があります。