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世界保健機関(WHO:World Health Organization)は、1946年にニューヨークで開かれた国際保健会議が採択した世界保健憲章によって1948年に設立された、国際連合の専門機関のひとつです。我が国は1951年の第4回総会において、加盟が認められました。
目的は、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲章第1条)であり、人間の健康保持増進を基本的人権のひとつと捉えています。WHOの健康の定義は、「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉(安寧;well being)の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」(WHO憲章前文より)で、日頃使っている健康の概念よりもかなり広い目標が掲げられています。第二次世界大戦終了から間もないころであり、その反省から精神的な健康、社会的安寧にも重点を置いたといえます。
WHOは、世界各国の上に存在する公衆衛生機関である、保健衛生の分野における問題に対し、広範な政策的支援や技術協力の実施、必要な援助等を行っています。また、エイズ、マラリア、結核、新型インフルエンザなどの感染症やエボラ出血熱、ラッサ熱などの風土病の撲滅、たばこ枠組み条約といった国際保健に関する条約、協定、規則の提案、勧告、研究促進等も行っており、ほかに食品、生物製剤、医薬品等に関する国際基準も策定しています。
2022年末現在、世界全体からみれば、未だに飢餓に瀕している人々が10人に1人の割合(8億1千万人)で存在していますし、HIV/エイズ感染者が3840万人で、年間150万人の新規患者、約65万人の死亡者が出ていると推定されています。そして何と言っても2019年に世界中に蔓延した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、これまでに6.7億人の感染者と683万人の死亡者を出していします。しかも、新型コロナウイルスは新たなウイルス変異株が続々と報告され収束する気配を見せません。したがって、WHOの軸足は感染症対策に置くのは当然と言えます。
活動はスイスのジュネーブ本部とアフリカ、アメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、東地中海、西太平洋、合計6つの地域事務局に所属する7000人の国連職員が担当しています。日本は1951年に加盟してからWHOの活動に積極的に参画して、長年、執行理事会の理事指名国に選ばれています。中嶋宏博士が2期10 年間本部の事務局長を務めていました。日本は西太平洋地域事務局に属し、新型コロナウイルス感染症対策で有名な尾身茂博士がその事務局長に就任していました。
新型コロナウイルス感染症、エボラ出血熱、新型インフルエンザなどの新たに発生した感染症や、すでに克服されたと思われていた結核やコレラといった感染症の再興が、国境を越えて世界規模で大きな脅威となっていることから、これらを「新興・再興感染症」と位置づけて総合的・重点的に対策を講じています。また、ポリオなど特定の疾患の根絶や制圧にも取り組み、重点的な予防接種推進によってアメリカ地域に次いで西太平洋地域でも2000年10月に京都でポリオ制圧宣言を行いました。さらには、ハンセン病、フィラリア症、アフリカやラテン・アメリカの風土病についても、制圧対策を推進し、麻疹、破傷風、ジフテリアなどの疾患の発生を防ぐ拡大予防接種計画、結核に対し直接管理のもとに集中的な服薬を行う短期療法(DOTS)、小児期疾患総合管理対策、日常の疾病対策に不可欠な必須医薬品対策などを、重点活動として推進しています。先進諸国にも関連する業務として、医薬品、血液製剤、食品、化学物質等に関する安全対策、基準策定、副作用など健康危機管理上重要な情報の迅速な提供などにも努めています。その他、妊産婦対策や家族計画などのリプロダクティブ・へルス対策、自然災害や紛争等の緊急事態に対する緊急人道援助、クローニング技術の人間への応用に対する警告発信など生物科学的観点のみならず社会的・倫理的観点も含めた総合的対策にも取り組んでいます。とくにたばこ対策については、「WHO たばこ対策枠組条約」が2005年に発効され、公衆衛生分野で初の国際条約となりました。締約国は、たばこ消費の削減に向けて、広告・販売への規制、密輸対策が求められますが、我が国も2005年にこれを正式に締結しました。この条約の思想理念を基に受動喫煙の防止を謳う健康増進法が我が国で制定され、たばこの広告の規制や、たばこパッケージに「健康に悪影響」を表示、多数の人々が利用する施設での禁煙など、徐々にですがその対策が進んでいます。
WHOの国際電磁界(EMF)プロジェクトについては第Ⅵ章1-1 でその概要を説明しますが、この国際EMF プロジェクトは「より健康な人々:Healthier Populations」というクラスター(事務局長の下に9のクラスターがあります)の「環境、気候変動と環境:Environment、Climate Change and Health」部の中にある「放射線と健康Radiation and Health」ユニットで行われている4つのプログラムのひとつです。これ以外に紫外線の健康影響やその対策を行うインターサンプログラム、国際ラドンプロジェクト、原子力発電事故対策を行う電離放射線プロジェクトが活動しています。
ちなみに、近頃メディアでも取り上げられてきた、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成されていますが、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。国際電磁界(EMF)プロジェクトは、17ゴールの中の3番目「すべての人に健康と福祉を:Good Health and Well-Being」に関連した活動と位置づけられています。