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今や各家庭や職場では、パソコンが不可欠になっていますし、携帯電話は日本の総人口よりも数多く使用され、私達の生活をより便利により快適にしていますが、このような機器もその数が膨大となり氾濫するようになると、これらの機器から発生する電磁波が付近の電子機器に影響をおよぼし、障害を引き起こす可能性があります。
このため、パソコンなどの電子機器から発する不必要な電磁波は、できるだけ低減する必要があります。一方、携帯電話などの無線機器からの電磁波は、通信に欠かせないものですから、電子機器はこの電磁波を受けても誤動作しないように対策を講じなければなりません。このように、さまざまな電子・通信機器は、お互いに不必要な電磁波を発生しないように、また他の機器の電磁波を浴びても障害を引き起こさないように、つまり相手に迷惑をかけない、かけられても耐えられる対策が求められます。
これを受けて、EMCという概念が生まれました。EMCとはElectro-Magnetic Compatibilityの略語で、「電磁両立性」と訳されています。JISでは、「装置またはシステムの存在する環境において、許容できないような電磁妨害を他のいかなるものに対しても与えず、かつ、その電磁環境において、それ自体が満足に機能するための装置またはシステムの能力」と定義しています。したがって、EMCは「各種の機器・システムが電磁的に仲良く、共に生きる」という意味の専門用語です。
複数の装置を近接して設置する場合、個々の装置から発生する妨害波によって、他の機器が影響を受けるため、上記の「電磁両立性」を確保するために、個々の装置の特性と環境に応じて「エミッション限度値」と「イミュニティ限度値」を設定する必要があります。
「エミッション限度値」とは、他の機器が許容できる最大値のことです。つまり、「エミッション限度値」を低く定めるとその装置の妨害波によって他の機器が障害を受けることは少なくなります。一方、「イミュニティ限度値」とは、妨害波に対して性能低下しないために必要とされる最低限の能力です。「イミュニティ限度値」を高く設定すると、他の装置の妨害波の影響を受けにくくなります。
下に、自動車を例にエミッションとイミュニティの関係を表した図を示します。
ちなみに、携帯電話から発生する電磁波により心臓ペースメーカが誤作動しないようにするため、15センチメートル以上(2013年度より)離すことが求められています。この場合、携帯電話は電磁波を発信することによって使用目的が達成されますので、単純にエミッション限度値を下げることはできません。その代わりに一定の距離を保つことにより誤作動を防止する対策がとられているといえます。一方、心臓ペースメーカもこれまでに外部からの妨害波に対する対策が進められています。