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前回で、身の周りにあふれるさまざまなリスク要因を、自分なりに優先順位をつける方が必要であることを説明しました。では多数のリスク要因をどの様にすれば比較できるのでしょうか?
実は、それ程容易ではありません。
自然災害、廃棄物、化学物質、放射線、建築物、高度技術、環境、健康・保健、事故、犯罪リスク、社会経済活動などそれぞれのリスク形態によって、避けたい出来事は全く異なります。特に社会犯罪や社会経済活動のリスクとその他のリスクが招く結果は違います。これから紹介する例は、あるリスク要因によって「死」や「疾病」という結果を招くことを共通項にして、種類の違うリスク要因の大小を比較するものです。全てのリスクが「死」や「疾病」という結果を招く訳では有りませんが、種類の違うリスクを比較する一つのヒントにはなると思います。
蒲生昌志という化学物質のリスクの専門家が「損失余命」という概念を提案しています。あるリスク要因によって日本人の平均余命が何日損失する(短命になる)か計算して他のリスク要因と比較する方法です。リスク要因がもたらす死亡率は同じでも、若年者層の死を招くか、高齢者層の死を招くかによって損失余命は異なります。若年者の余命は高齢者より当然長いので、前者の方が損失余命は大きくなります。
なお、リスク要因の全てが死を招く訳ではありません。病気になったり、身体的障害を招くだけの場合もあります。この時は、それらによって生活の質が悪くなり健康状態に依存して短命となることを推定するコーネル・メディカル・インデックスを使用して損失余命を算出しています。下表をご覧下さい。
一番上にあるのは、喫煙です。喫煙によって1500日命が短くなっています。言い換えれば日本中の喫煙者が禁煙するといずれ4年近く寿命が延びること意味しています。2番目が受動喫煙です。分煙化が完全に履行されれば日本人の寿命が120日長くなります。3番目がディーゼル粒子で、58日。大気汚染がまたまだ大きな環境問題となっていることを示しています。次がラドンで9.9日。意外と思われるでしょうが、石(コンクリート)に含まれる放射性物質がラドンを徐々に放出されて室内の空気を汚染し、これを吸うことで体内被曝し肺がんを招きます。2000年初頭に大騒ぎとなったダイオキシンですが、比較的短く1.3日です。商用周波磁界の損失余命は0.02日と推定されました。商用周波磁界の損失余命を1とすると、ダイオキシンは65倍、ラドンは495倍、ディーゼル粒子は2871倍、受動喫煙は6000倍、喫煙は75000倍の相対リスクとなります。別のモノサシで比較してみます。下記の表をご覧下さい。
厚生労働省から出ている人口動態統計や総務省の統計局、警察白書などをモノサシにして、様々な病気や生活習慣、事故によってどの位の人が毎年亡くなっているかを知ることができます。 平成22年の人口動態調査から、日本全体で1年間に約119万人の方が無くなっています。その30%が「がん」、16%が「心疾患」、10%が「脳血管疾患」となっています。いわゆる3大死因で半数以上の方が無くなっていることになります。ところで喫煙はどうでしょうか?近年は健康増進法が徐々に認知され、喫煙対策としての禁煙促進や受動喫煙防止といった健康増進プログラムが実施され、平成20年の成人喫煙率は男性が37%で、女性は横ばいであるものの、男女平均の喫煙率は21.8%と減少の一途をたどり、未成年喫煙者も減少傾向にあることは喜ばしい限りです。しかし、夕刻以降の寿司屋や居酒屋ではサラリーマン(ウーマン)の発する紫煙が立ち込めています。たばこ煙中には発がん物質や有害な化学物質が200種類以上も含まれており、「がん」はもとより、「心疾患」や「脳血管疾患」の背景となる粥状動脈硬化を促進させています。厚生労働省の調べでは、喫煙による死亡は年間13万人余、受動喫煙によるそれが6800人と推定されています。国民の9人に1人は喫煙が原因で亡くなっていることになります。交通事故はどうでしょうか?20年前の死亡者は1万1千人を超えていたのですが、交通安全運動が功を奏し10年前から急激に減少。平成21年には5千人を切っています。同じ事故でも、鉄道事故は196人、海難は128人です。火事では1877人。社会問題化している自殺者は自動車事故による死亡者数の6倍、31680人となっています。落雷でもまれにですが、毎年2-3人の方が亡くなっています。仮に商用周波磁界が原因で小児白血病になるとしても亡くなる方は1人未満です。同じモノサシでいろいろな健康リスクの大きさを比較してみると、電磁波のリスクは深刻に悩む程の大きなリスクではないと推定されます。WHOも同じ見解です。電磁界情報センターは、モノサシとなるさまざまな情報を提供して、みなさまが電磁波の健康リスクを判断されるお手伝いをしていますので、ぜひご活用下さい。