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前回は、中間周波電磁界の健康影響について、その概要を説明しました。
オール電化の一環としてIH調理器が多くの新築住宅で導入されています。その普及率は世界一。 調理に伴う出火もほとんどなく、燃焼にともなう室内空気汚染もないので人気を博していますが、中にはIH調理器から漏れる中間周波磁界の健康影響に懸念を抱く方もいます。 国会でもIH調理器の健康影響について取り上げられました。IH調理器は家庭内で使用していますので、居室の安全性を管轄する厚生労働省としてもこの問題を軽視できないと判断して、平成21年度厚労科学研究費の健康安全・危機管理対策総合研究事業のひとつに「居室における中間周波電磁界に関する研究」と題する研究を公募。 そこで、電磁界情報センター、首都大学東京、情報通信研究機構、国立保健医療科学院、鉄道総合研究所、明治薬科大学が共同提案した結果、私達の提案が採用されました。以下にその研究結果を紹介します。
中間周波電磁界の健康影響は、短期的影響と長期的影響を考慮する必要があります。短期的影響は国際的なガイドライン以下であれば確認されていませんが、長期的影響についての健康リスク評価に必要な科学的データが少数しか集まっておらず、もっと研究が必要と言えます。これまで中間周波の長期的ばく露影響については、テレビのブラウン管を対象にした研究があり、有害な影響は確認されていません。IH調理器もテレビのブラウン管も共に20キロヘルツ前後の中間周波電磁界を発生していますので、人への影響は基本的には同じであり、その結果に差異はないと見なして良いと考えられます。しかし、厳格には両者でその波形が微妙に異なります。コンピュータモニターはノコギリ波で、IH調理器は正弦(サイン)波です。そこで正弦波を用いたばく露にも影響は無いのか新たなチャレンジが必要となりました。一般的に電磁界の健康リスクを調べるには、電気工学的なばく露評価をきっちりしつつ、疫学研究、ヒトを対象とする実験室研究、動物および細胞研究などの生物学的研究を行うことが必要です。 これまでにIH調理器使用に関する疫学研究は行われていません。IH調理器普及の歴史が短いことも原因と考えられますが、同じ周波数帯の電磁界を発生させるブラウン管に関する疫学調査で影響が確認されていないこともその背景があるかも知れません。国民が心配しているのは、妊婦や胎児、小児への影響ですから、動物や細胞を用いた生物学的研究を行い、これで人への影響につながる影響が確認された場合には、その影響を指標とした疫学研究を行うと良いのではないかと私は考えました。そこで、IH調理器から発生する中間周波電磁界の生体影響が有るかどうか、電磁界ばく露の細胞や生体の免疫系機能、妊娠・出産、奇形などの胎児への影響を追究する研究計画を提案しました。研究は三つの班から構成されています。電気工学班・細胞研究班・動物研究班です。電気工学班は首都大学東京と情報通信研究機構。細胞研究班は鉄道総合研究所と明治薬科大学、それに電力中央研究所も研究協力しています。動物研究班は国立保健医療科学院が担当しました。私は研究代表者として全体を取りまとめました。