電気の使用を伴う生活様式の定着や電波などの通信技術の進化による通信環境の変化により、現代の生活環境では、さまざまな電磁波の中で日常生活を送っていると言えます(電磁波問題あれこれ ~第3回連載~、~第4回連載~ 参照)が、我々はその電磁波を直接見たり、感じたりする事は出来ません。

電力設備や電気製品などの使用で、その周辺に発生する50や60ヘルツ(Hz,1Hz=毎秒1サイクル)の商用周波電磁界に近づくことにより、ヒトの体内に電流と電界が発生します(これを『誘導される』と言います。ただし、日常の生活環境では、その誘導される電流や電界の強さは、ヒトが生理的に生体内で発生する電流や電界よりもずっと低いと言えます)。

電界にばく露されると、毎秒50や60サイクルで振動する電荷が体表面に発生します(これにより体内に電界や電流が発生しますが、これを誘導されると言い、誘導される体内の電界の強さは外部電界よりも何桁も小さいと言えます)が、これをヒトは感じる事ができます。感じ方は外部電界の強さ、周囲環境条件や個人の感受性に左右されますが、ボランティアによる実験によると、参加者の10%が電荷を感じると答えた最低値(閾値)は2 - 20kV/mでした。また、参加者の5%が15 - 20kV/mで不快に感じることが分かりました。 この様な体表面に誘導される電荷による不快な刺激作用を除けば、20kV/mまではヒトへの健康影響はないと考えられています。 また、これまでの研究では100kV/m以上の電界でも動物の繁殖や成長に何らかの影響を与えることは確認されていません。 商用周波電界が発生する代表的なものとして電力設備があげられますが、我が国の電力設備に対する商用周波電界の規制値は3kV/mですので、日常生活を送っている限り電界によって悪い影響が起こるとは考えられません。

磁界にばく露されると、体内に電流や電荷が誘導されますが、日常生活で出会う強さの商用周波磁界でヒトの生理機能や行動に影響を与える事はありません。 5mT(ミリテスラ)までは、血液、心電図、心拍数、血圧、体温などの指標にほとんど影響をあたえることはないことが研究でわかっています。 我が国が今後導入する予定の電力設備の磁界規制値は、50ヘルツで0.1mT(1000mG(ミリガウス):100μT(マイクロテスラ))、60ヘルツで0.083mT(833mG(ミリガウス:83.3μT(マイクロテスラ))です。

これらの値は、国際的な組織である国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって提唱されていますが、この科学的な根拠は、周波数が100キロヘルツまでの低周波は外部の電磁界によって誘導される電流や電界がヒトの神経系へ影響を与える事から導き出されたものです。 この値は前述の神経系の刺激や中枢神経系への一過性反応を避ける為に設けられています(これを基本制限と言います)が、実際には体の中の電流や電界を測定できないので、その様な環境を作り出すと思われる外部の、測定可能な指標である磁界の強さ(ミリテスラなどの単位)を用いて設定しています(これを参考レベルと言います)。

なお、ICNIRPのガイドラインは、職業環境と一般環境では値が異なります。職業環境は健常な人々が従事していると考えられ、前述のヒトの神経系へ影響を与えると推定されるの最小値(例えば5mT)の10倍厳しい値(例えば0.5mT)となりますが、一般環境では、病人、老人、乳幼児、妊婦なども含まれていますので、職業環境の規制値よりもさらに5倍も厳しい値(例えば0.1mT)が適用されています。 現在ICNIRPでは、2007年に行われたWHOによる低周波電磁界のリスク評価(環境保健クライテリア238)を受けて、1998年にICNIRPが提案したガイドライン値の見直しを行っています。 今年7月末に提案された新たなガイドライン(案)でも、商用周波電磁界のガイドライン値に変更はありません。

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