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小児白血病とは、15歳未満の子供が罹る血液がんで、小児がんの約4割に相当します。
白血病細胞がリンパ性由来か骨髄性由来かによって、リンパ性白血病または骨髄性白血病に分類されますが、小児白血病の95%は急性白血病で、約70%は急性リンパ性白血病(ALL:Acute Lymphoblastic Leukemia)、約25%は急性骨髄性白血病(AML:Acute Myeloid Leukemia)です。われわれの血液に含まれる細胞には赤血球、白血球、血小板の3種類があり、骨の中の骨髄で毎日つくられていますが、白血病は、これから血液細胞になる若い細胞(芽球=白血病細胞)が赤血球、白血球、血小板に成熟・分化せず、骨髄に蓄積することによって起こります。芽球の増加により正常に造血を行うスペースがなくなると、血液細胞を作れなくなり、発熱、顔色不良、紫斑、鼻出血など、正常の造血能力が損なわれるために起こる症状が現れます。急性リンパ性白血病は2~6歳に好発しますが、急性骨髄性白血病では年齢のかたよりはありません。 現在では、優れた化学療法剤の開発もあり、治癒率は80~90%です。
小児白血病の原因として、大量の電離放射線の被曝や、ごく一部にウイルス感染があることは分かっています。他の原因として農薬や大気汚染物質、自動車の排ガスなど上げられていますが、原因は特定できません。なお、小児白血病もほかのがんと同様に、遺伝子の傷が重なって発症することがわかっています。 たとえば、乳幼児期の急性リンパ性白血病の多くは、白血病の発症に関わる遺伝子異常が胎児期に起こることがわかっています。 乳児期の急性リンパ性白血病は胎児期に白血病化しますが、幼児期の急性リンパ性白血病は、さらに生後に第2の遺伝子異常が加わって白血病になると考えられています。 電離放射線が持っているエネルギーの10兆分の1しかない商用周波電磁界がこの遺伝子異常にどの様な関わりを持つか、現在アメリカやイギリスでその解明にチャレンジしていますが、その解明にはまだまだ時間が掛かると予想されます。
国立環境研究所の故兜眞徳先生が行った疫学研究では、2002年に全国で450人の小児白血病患者が発生しています。 一方、2000年に発表されたスウェーデンのアールボムの小児白血病と商用周波磁界に関する疫学のプール分析の結果では、0.4マイクロテスラ以上の商用周波磁界の生活環境で、小児白血病の発症率が2倍に上昇すると報告されています。 また、兜先生の報告では、0.4マイクロテスラ以上の商用周波磁界の生活環境に住む子供は0.8%と報告されています。 第7回連載では、WHOの見解として、商用周波磁界が小児白血病を引き起こす(因果関係がある)とまでは言えないとの見解を示していますが、仮に因果関係があったと仮定して、磁界による過剰リスクを推定できます。つまり、全国で毎年450人の患者が発生し、その中の0.8%の子供の小児白血病に罹る倍率が2倍に上がることになりますので、450 x 0.008を計算すれば導き出されます。 答えは3.6。毎年3.6人の小児白血病患者が磁界によって過剰に発生すると予想されます。 この数値はマクロな公衆衛生行政から見ると決して高い数値とは言えませんが、ばく露の多くが受動的であることを考慮する必要もあります。