スウェーデン放射線安全庁(SSM)の科学評議会が
「電磁界と健康リスクについての最近の研究に関する年次報告書」を発表
2020.4.6掲載
スウェーデン放射線安全庁(SSM)の「電磁界に関する科学評議会」は2020年4月3日、「電磁界と健康リスクについての最近の研究」に関する年次報告書を発表しました。
同評議会は、電磁界へのばく露に関連する潜在的健康リスクについての現行の研究モニタし、 あるかも知れない健康リスクの評価について同庁に助言を提示しています。 科学的検証が必要な政策事案について同庁が提言を示さなければならない場合、同評議会は助言を提示します。 同評議会には、現行の研究及び知識の状況について、書面での報告の提出が毎年求められています。
今回の報告書は一連の報告書の14番目のもので、2018年4月から2018年12月までに発表された研究をカバーしています。 この報告書は、異なる領域の電磁界(静磁界、低周波、中間周波、および無線周波電磁界)、 ならびに、生物学的研究、ヒト研究、疫学研究等の異なるタイプの研究をカバーしています。
今回の報告書の主な結論は以下の通りです。
「電磁界ばく露と健康リスクとの新たに確立された因果関係は同定されませんでした。全体として、脳腫瘍の年齢調整発生率は、 携帯電話使用からの電波ばく露との因果関係を何ら支持していません。 仮に[携帯電話使用による脳腫瘍への]インパクトがあるとしても、それは非常に弱く、発生率の傾向についての研究では検出できません。
子どもおよび若年者の認知機能および行動に対するインパクトについての研究では、 しばしばワイヤレス情報技術の使用との関連が報告されています。 最も強い関連は、例えばメールのような、頭部へのばく露が低いアプリケーションとの相関が認められていることから、 電波ばく露以外の理由がこの関連の主な原因であることは明らかです。 電波ばく露をその他のあるかも知れないインパクトの発生源と区別するための試みが、 少数の研究で講じられています。そのような研究では、電波ばく露の弱いインパクトについての若干の徴候が認められていますが、 この観察結果について何らかの確たる結論を導くには、同様の研究アプローチでの確認が必要です。
従来の報告書と同様に、同評議会は、 動物研究における弱い電波ばく露による酸化ストレスの増加についての研究を報告しており、 その幾つかは[国際的なガイドラインの]参考レベルよりも低いものです。 酸化ストレスの増加は、眼、精巣および坐骨神経で認められています。 但し、複数の研究では、脳での酸化ストレスは認められませんでした。 酸化ストレスは自然の生物学的プロセスで、これは病気の発生に関与することがありますが、 どのような状況下で電波ばく露による酸化ストレスがヒトの健康に影響を及ぼし得るかは、まだ調査されていません。
精巣の電波ばく露が精子数、精子の生存率および血清テストステロンの減少を生じることが、 幾つかの動物研究で観察されています。そのようなばく露がヒトにどの程度影響し得るかについては、 調査が必要です。低周波磁界へのばく露レベルが高い労働者におけるALS[筋萎縮性側索硬化症]についてのメタ分析研究では、 僅かなリスク上昇があると結論付けられています。 電磁スペクトルの中間周波(IF:300 Hz-10 MHz)の範囲でのアプリケーションが増加しているものの、この範囲における潜在的健康リスクについての科学的評価は乏しいです。
今回の年次報告書には、満足できる質に欠ける研究の一覧を示した章が盛り込まれています。 前年と同様、今年も、多くの研究が質の低さのために除外されました。 科学的視点からは、質の低い研究は重要ではありません。それは資金、人的資源、また多くの場合、実験動物の浪費でもあります。」
また、同国の現行の政策の妥当性については以下のように述べています。
「本研究レビューの結果、当該分野における[国際的なガイドラインの]参考レベルまたは勧告を変更する理由は何ら示されませんでした。 但し、弱い電波ばく露による動物における生物学的影響の観察結果は、スウェーデンの環境規則のプレコーション的な考え方を維持することの重要性を明らかに示しています。
神経膠腫の発生率についての傾向からは、携帯電話の電波ばく露によるリスク上昇は支持されていないものの、 携帯電話通話に対するハンズフリーについての勧告は維持されます。 但し、観察されている生物学的影響、および、あるかも知れない長期的影響に関する不確かさから、注意喚起は正当化されます。
電力線の近くでの小児白血病の発生率の増加が観察されていることから、低周波磁界へのばく露の一般的な制限についてのスウェーデン当局の勧告は維持されます。」
この報告書の原文は、以下のURLで確認できます。