オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)が
5G電波についてのレビュー論文を発表

2021.03.18掲載

オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)は2021年3月17日付で、スウィンバーン工科大学と共同で実施した2報の科学的レビューの結果、第5世代移動通信(5G)で用いられている電波による健康への悪影響の証拠は認められなかった、と発表しました。

1つ目のレビューでは、5G電波についての科学の現状を評価するため、ミリ波とも呼ばれる6 GHzを超える周波数の低レベル電波についての研究138報を調査しました。その内訳は、遺伝毒性、細胞増殖、遺伝子発現、細胞シグナル伝達、細胞膜機能を含む様々な生物学的影響を調べた実験研究が107報、5Gと類似した電波を用いるレーダーへのばく露を調べた疫学研究が31報でした。

ARPANSAの評価・助言部門の副部長、Ken Karipidis博士は、「結論として、これらの研究を全てレビューした結果、5Gネットワークで用いられているような低レベル電波がヒトの健康に対して有害であるという具体的な証拠は示されませんでした」と述べています。

2つ目のレビューは、何らかの生物学的影響を評価するため、低レベルのミリ波についての107報の実験研究を統合して再分析したものでした。Karipidis博士は、「この再分析でも、ミリ波と健康への悪影響との関連の証拠はほとんど示されませんでした。生物学的影響を報告した研究は全体として、独立した再現がなされておらず、レビュー対象の大半の研究はばく露の評価と制御の方法として質が低いものを採用していました。私たちは、今後の実験研究では、ドシメトリ[ばく露評価]と温度制御に特に注意を払って研究デザインを改善すること、また今後の疫学研究では、ワイヤレス通信に関連する人口集団における長期的な健康影響のモニタリングを継続することを推奨します」と述べています。

これらのレビューで得られた知見は、低レベルの5G電波は一般公衆のばく露に対して安全であるとみなしている、オーストラリア国内および国際的な電波の保健安全ガイドラインと一致しています。

ARPANSAの副長官で、主席放射線衛生科学者のGillian Hirth博士は、「ARPANSAは5G電波の安全性の研究および評価への継続的な貢献を誇りに思います。この活動は、オーストラリア政府の電磁エネルギープログラムにおける我々の関与の中核であり、オーストラリア国民に対する安全な電波環境についての我々のビジョンを示す助けになります」と述べています。

このレビュー論文2報は、専門誌Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology[ばく露科学・環境疫学誌]に掲載されています。

ARPANSAのレビュー論文についての報道発表は、以下のウェブサイトで確認できます。

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