国際がん研究機関(IARC)が発がんハザードの同定についてのウェブサイトを更新(Volumes 1-133)

2023.4.4掲載

世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(ARC)は、2023年3月24日付で「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフのウェブサイトの「IARCモノグラフで分類された因子、vol.1-133」のページ https://monographs.iarc.who.int/agents-classified-by-the-iarc/を更新しました。
これは、「IARCモノグラフVol.133:アントラセン、2-ブロモプロパン、メタクリル酸ブチル、および亜リン酸水素ジメチル」の概要版の発表に伴うものです。

アントラセンは大量生産されている多環芳香族炭化水素の一つで、染料や顔料、花火、コーティング剤、木材防腐剤、殺虫剤、有機化学物質の製造の中間体として用いられています。また、たばこの煙、バイオマスの(屋内および屋外での)燃焼、運輸および産業部門からの排出物、汚染された食品によっても形成され、環境中のあらゆるところに存在する広範な環境汚染物質です。
2-ブロモプロパンは溶剤の一つで、ドライクリーニングや、接着剤の製造および塗布に用いられ、また、1-ブロモプロパン(1990年代以降、オゾン層の破壊につながる溶剤の代替品として使用されています)の不純物としても発生します。
メタクリル酸ブチルは大量生産される化学物質の一つで、コーティング剤、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン不織布材料、接着剤、水漏れ防止剤、インクおよび塗料、殺虫剤、ヘルスケア材料に用いられています。
亜リン酸水素ジメチルは大量生産される化学物質の一つで、吸着剤、潤滑油、殺虫剤、薬品の製造の中間体として、また油および石膏の安定剤、鋼の腐食防止剤、難燃剤として用いられています。

これらの作用因子全てについて、ばく露レベルのデータは乏しく、ヒトにおけるがんについての利用可能な疫学研究はありません。IARCの作業部会は、「実験動物におけるがんについての十分な証拠」および「メカニズムについての限定的、または不十分な証拠」に基づき、アントラセン、メタクリル酸ブチル、および亜リン酸水素ジメチルを、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)に分類しました。2-ブロモプロパンは、「実験動物におけるがんについての十分な証拠」(発がん活性の異常な高さに留意)および、ばく露されたヒトにおけるメカニズムについての証拠を示唆する「実験系におけるメカニズムについての強い証拠」に基づき、「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)に分類されました。


モノグラフVol.133についての情報は、以下のウェブサイトから入手可能です。
https://monographs.iarc.who.int/news-events/volume-133-anthracene-2-bromopropane-butyl-methacrylate-and-dimethyl-hydrogen-phosphite/

なお、電磁界に関する発がんハザードの分類の変更はありません。


[JEICによる注記]
IARCは、化学物質や喫煙などによって及ぼされる発がんハザードの同定のための調査・研究と、がん対策を推進する機関です。
IARCによる発がんハザードの同定は、対象となる作用因子、例えば、物理的因子、化学的因子、特殊な環境因子等による定性的な評価(発がんハザードの証拠の確かさの程度)をグループ別に分類するものであり、定量的な評価(発がん性の強さ)をするものではありません。

IARCについての更に詳しい情報は、こちらをご覧下さい。
https://www.jeic-emf.jp/academic/international/iarc/

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