ICNIRPのホームページに掲載されたインターフォン研究に関する論文の紹介について

2011.07.28掲載

≪ICNIRPのホームページに掲載されたインターフォン研究に関する論文の紹介について≫

ICNIRPホームページの「活動とニュース」に、ICNIRP第1常設委員会(疫学;委員長Swerdlow博士)の最新論文が掲載されました。その概要をご紹介いたします。

「携帯電話、脳腫瘍、そしてインターフォン研究:我々は今どこにいるのか?」
著者:Swerdlow AJ, Feychting M, Green AC, Kheifets L, Savitz DA(ICNIRP疫学常設委員会)
原文タイトル:Mobile Phones, Brain Tumours and the Interphone Study: Where Are We Now?
所属(第一著者):Section of Epidemiology, Institute of Cancer Research(英国)
出典:Environ Health Perspect 2011[2011年7月1日電子版]

【概要】

これまでの15年間で、携帯電話使用は稀な行為から46億の加入件数を持つものに発展を遂げた。しかし、特に脳腫瘍などのがんを携帯電話が引き起こすかも知れないという可能性を公衆は懸念している。

これまでで最大規模の疫学研究であるインターフォン研究の最近のプール分析を中心に、脳腫瘍の主要なタイプである神経膠腫と髄膜腫のリスクが携帯電話使用により上昇するか否かに関する証拠について精力的にレビューし、この問題についてどこまで解明が進んでいるのか考察した。

インターフォン研究は、複数のばく露指標を用いた大規模研究であるが、想起に基づいた症例対照研究では避けがたい方法論的欠陥があり、知見の解釈には自ずと限界がある。しかし、そのような証拠を、生物学的研究および動物研究、他の疫学研究の結果、および脳腫瘍発生率の傾向と組み合わせて評価すると、携帯電話の最初の使用から10-15 年以内では、携帯電話使用による成人の脳腫瘍のリスクの実質的上昇は起こりそうもないことが示唆されている。ただし、現在のところ、小児の腫瘍のリスクに関してはデータがない。

インターフォン研究のような研究では想起による誤分類、コホート研究のような記録に基づいた研究では使用者の誤同定など、いずれにおいてもばく露測定に欠陥があるため、小さな影響(仮にあるとして)の検出にどちらの研究方式の信頼性が高いかは意見が定まらない。この理由と、原理的に科学的研究は影響が完全にないことを証明することはできず、考え得る影響の大きさに対して限度を設定することしかできないという理由の両方から、不確かさはこれからも必ず残る。また、これまでに入手できたデータは期間が限定されていて、主に10年間までのばく露か、それを超えてもせいぜい数年であることから、影響が現れるまでの長い遅延期間を原因とする不確かさも残ることになる。特に髄膜腫は神経膠腫より一般的にゆっくり成長する。したがって、小さな長期的影響の可能性を排除することはできない。そうであっても、確信はまだ持てないが積み上がりつつある証拠は、携帯電話が脳腫瘍を引き起こすという仮説を打ち消す傾向を次第に示している。

上記の論文は、電磁界情報データベースにも登録してあります。

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