欧州委員会からSCENIHR(新興及び新規に同定される健康リスクに関する科学委員会)への「電磁界(EMF)ばく露の健康影響の可能性に関する科学的意見の提出要請」について
2011.12.16掲載
≪欧州連合≫
○欧州委員会からSCENIHR(新興及び新規に同定される健康リスクに関する科学委員会)への「電磁界(EMF)ばく露の健康影響の可能性に関する科学的意見の提出要請」について
11月16、17日ベルギーのブリュッセルで開催された「電磁界と健康に関する国際科学会議」(SCENIHR主催)の結果を受け、欧州委員会はSCENIHRに対し、『電磁界(EMF)ばく露の健康影響の可能性に関する科学的意見の提出要請』をしました。
その内容は、下記URLで確認することができます。
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/emerging/requests/index_en.htm
( Potential health effects of exposure to electromagnetic fields (EMF) )
電磁界情報センターでは、要請内容の日本語訳を作成しましたので、以下に紹介します。不明な点は原文をご参照ください。
(以下、日本語訳)
新興及び新規に同定される健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)
電磁界(EMF)ばく露の健康影響の可能性に関する科学的意見の提出要請
1. 背景
公衆の電磁界(0 Hz to 300 GHz)へのばく露の制限に関する1991年6月12日付のEU閣僚理事会(以下、理事会)勧告で、公衆の電磁界(EMFs)ばく露に対する基本制限と参考レベルは確定されています。この基本制限および参考レベルは、1998年に国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が公表したガイドラインに基づいています。理事会勧告に応じて、全ての加盟国は公衆のEMFばく露を制限する措置を、理事会勧告が提案した規定を採用するか、またはそれより厳しい規定を採用して施行に移しました。
労働者に対しては、EU理事会および欧州議会は、物理的要因(EMFs)に起因するリスクへの労働者のばく露に関する健康と安全のための最小限の要求についての2004年4月29日付の欧州指令2004/40/ECを採択しました。しかしながら、施行を巡る諸問題のため、その施行は延期されました。新しい欧州指令の提案は欧州委員会の採択を経て、現在、理事会と欧州議会で議論されています。
また、この理事会勧告は欧州委員会に対して、「この勧告の取り扱い範囲にある諸問題は、プレコーションの当を得た捉え方を含め、現時点の研究が目標としている影響の可能性を考慮に入れて、改定および最新化を視野に入れた見直しを常にかけること」も促しています。このICNIRPガイドラインは、1998年6月26日付で科学運営委員会(SSC)が提出した「EMFの健康影響に関する意見」において是認されました。その後、毒性・環境毒性と環境に関する科学委員会(CSTEE)はこのSCC意見を最新化し、2001年10月30日付の「人の健康に対する電磁界(EMF)、無線周波電磁界(RF)とマイクロ波放射の影響の可能性に関する意見」において、『1999年のSSC意見以降に入手された情報によれば、理事会勧告のばく露限度値の改訂に正当性はない』と結論しました。
SCENIHRは、2007年3月、2009年1月、2009年6月にそれぞれ意見を配布し、その中で先のCSTEEの結論を再確認し、この問題に関するデータの追加と研究の必要性を再度強調し、指定した研究分野に取り組むように勧告しました。
欧州委員会は、SCENIHRがこの分野における人の健康に対するリスクの評価に影響するかも知れない新しい情報を定期的にレビューし、欧州委員会へ科学的証拠を基盤とした定例の最新版を提出すると信頼しています。
SCENIHR の前回のレビュー締切の期限である2008年9月以降、人の健康に対するEMFばく露の影響可能性に関する科学的証拠を新しく分析するに十分な数の新しい科学的公表物が発行されています。その上、乗客検査用のセキュリティスキャナなど画像化技術を主体とするテラヘルツ範囲のEMFを利用した新技術の開発について新たな評価が必要です。
2011年11月16-17日、SCENIHRの主催で、欧州委員会が組織した「EMFと健康に関する国際会議」が開催され、この会議は、今後について科学的意見を求めるに当たり第一段階の準備として、この分野の最新の科学的進展の概観を示しました。
その結果として、SCENIHR はこのような新しい科学的証拠を精査すること、および考慮事項に挙げられた問題に特に力を入れて取り組むことを要請されました。
2. 考慮事項
SCENIHRは以下の要請を受けました:
- 新たに入手された情報を考慮して、2009年のSCENIHR意見を最新化すること。
- 先の意見において知識の重要な欠落の影響を受けた問題に特に注意を払うこと。とりわけ以下の問題が重要である。
- 神経行動学的異常を含む神経系および腫瘍疾患リスクに対するEMFの有害な影響の可能性。
- 観察された生物学的影響および疫学的関連を説明しうると考えられる生物物理学的メカニズムの理解。
- EMFに起因すると考えられる生物学的影響において、電磁界以外の環境ストレス因子と電磁界との複合ばく露が果たす役割の可能性。
- テラヘルツ範囲のEMFの健康への有害な影響の可能性を理解するために利用できる科学的証拠をレビューすること。
- この分野におけるこれまでの成果の最新化(特にSCENIHRとWHOが行った)を取り入れて、優先順位を示した研究勧告を作成すること。この勧告には、リスク評価に向けてデータの品質と有用性を確保するため、実験デザインと最小限の要件に関する方法論のガイドラインを含めること。
3. 提出期限
2012年12月