電磁界へのばく露から労働者を防護するためのEU指令の移行期限延期に関する提案

2012.02.09掲載

○電磁界へのばく露から労働者を防護するためのEU指令の移行期限延期に関する提案

2011年6月14日、欧州委員会から、電磁界へのばく露から労働者を防護するためのEU指令の修正が提案されました(当センターホームページで6月17日の最新情報掲載)が、新たに2012年1月26日付でEU指令の国内法への移行期限を2014年4月30日に延期することが提案されました。

新たな提案は、下記のリンクから入手可能です。

(提案文書)https://www.jeic-emf.jp/documents/pdf/st05733.en12.pdf

ここでは、今回の提案の概要を紹介します。

(提案概要)
Directive 2004/40/ECの正式名称は、「物理的因子(電磁界)から生じるリスクへの労働者のばく露に関連した健康と安全のための最小限の要件」に関する欧州議会/理事会指令2004/40/EC(Directive/89/391/EECの第16条1項の意図する範囲内における18番目の個別指針)で、300 GHzまでのEMFへの職業的ばく露を制限することを目的としたものです。

一般に、欧州議会/理事会指令はEUの法的文書であり、加盟国はそれを国内法で施行しなければなりません(このプロセスを移行(transposition)と呼びます)。Directive 2004/40/ECは2004年にEUによって採択され、その移行の最終期限は2008年4月30日とされました。しかし、以下に述べる理由から、現在は2012年4月30日に延期されています。今回の提案は、さらに2014年4月30に延期するものです。

そもそもの延期の理由は、Directive 2004/40/ECの適用により臨床および研究における磁気共鳴画像(MRI)装置の利用が制限されることになるものの、MRIで利用されている周波数範囲の磁界について科学的根拠が不明確なまま限度値が定められたことにあります。MRI装置は独自の画像化能力を持つばかりでなく、放射線ハザードなしに画像を提供するため、現在の医用診断・治療に大きな比重を占めています。そのため、医学界を初めとする関係団体はこの指令の実施により実際に医療現場に起きる大きな混乱と損失を指摘し、その実施に強い懸念を表明しました。

先例のないことでしたが、Directiveに責任を持つECは2008年4月23日付で当初の移行期日の延期を決定しました。その後ECは、指摘された問題点を踏まえた修正作業に着手し、多くの関係者との協議を重ね、またICNIRPのガイドライン公表(静磁界:2009年4月;1 Hzから100kHzの電界および磁界:2010年12月)を待って、2011年6月14日にDirective 2004/40/ECに置き換わる修正Directive 2004/40/ECの提案を採択しました。ECは、この修正Directive 2004/40/ECは「労働者の健康と安全の高度の防護」と「EMFを利用した医療および他の産業活動の継続と発展」の両方を確保するものであるとしています。

しかし、主要課題の技術的複雑さ、および提案に含まれる重要規定に関する見解の大きな隔たりという2つの理由により、提案した修正Directive 2004/40/ECが現在の移行期限の前に欧州議会およびEU理事会で採択されることは難しいと考えられるため、移行期日を延期することが適切と判断して今回の提案に至ったと述べています。

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