英国国民保健サービス(NHS)「最近公表の携帯電話疫学研究」についての報道発表
2014.5.22掲載
英国国民保健サービス(NHS)は、オキュペイショナル&エンヴァイロンメンタル・メディスン2014年5月9日付電子版に掲載された論文「CERENAT症例対照研究における携帯電話使用と脳腫瘍」(Coureau G et al. Mobile phone use and brain tumours in the CERENAT case-control study. Occup Environ Med 2014. [in press])に関するプレスリリース「脳腫瘍とがんとを結び付ける研究は決定的なものではありません」を5月14日付で発表しました。要約を以下に紹介いたします。
【要約】
まず、「このフランスの症例対照研究では、規則的なな携帯電話使用(6か月以上にわたって週に少なくとも1回通話と定義)と、最も多いタイプの脳腫瘍のリスクとの関連は認められませんでした。但し、最もヘビーな使用(生涯の累積通話時間が896時間以上)でのリスク上昇が認められました」と紹介しています。
NHSの編集を経て、この欄の著者は、この研究の重要な問題点を指摘しています。簡潔に紹介します。
この研究は、2004~2006年にフランスの4つの地域で脳腫瘍と診断された人々、ならびに彼らとマッチングした対照を調査したもので、サンプル数が少ない。
8-10年前のフランスの中年層の携帯電話使用状況の調査であり、規則的使用者は50%に過ぎなかった。現在関心が持たれているのは、特に若い人の使用である。
896時間以上の生涯の累積通話時間と腫瘍との関連は認められたが、このような使用を自己申告した実数は、神経膠腫では症例24人と対照22人、髄膜腫では症例13人と対照9人のみである。そのような少数の人々の分析ではリスク上昇が偶然に示されることがある。
総括として、「全体として、この研究は決定的な解答に至る道筋に何も貢献していません。急速に革新が進む携帯電話技術にとって、この研究の価値は疑問です」と述べ、「求められているのは、携帯電話使用に関する長期コホート研究ですが、幸いなことに、既にCOSMOS研究が進行中であり、現在、英国を含む欧州5ヵ国から29万人が調査に登録されています」と付言しています。
当該論文アブストラクトURL:
http://oem.bmj.com/content/early/2014/05/09/oemed-2013-101754.short?g=w_oem_ahead_tab
報道発表URL:
http://www.nhs.uk/news/2014/05May/Pages/Study-linking-brain-cancer-and-mobiles-inconclusive.aspx