国際がん研究機関(IARC)が発がんハザードの同定についてのウェブサイトを更新(Volumes 1-135)

2023.12.4掲載

世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、2023年12月1日付で「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフ」のウェブサイトの「IARCモノグラフで分類された因子」のページを更新しました。
https://monographs.iarc.who.int/agents-classified-by-the-iarc/

これは、「IARCモノグラフ Vol. 135:ペルフルオロオクタン酸およびペルフルオロオクタンスルホン酸」の概要版の発表に伴うものです。

ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、2014年にIARCモノグラフVol. 110で評価されていました。ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)は、今回のIARCの作業部会で初めて評価されました。

PFOAおよびPFOSは、分解に非常に強い、フッ素化アルキル化合物(PFAS)です。1940年代に初めて生産されたPFOAは、フッ素ポリマーの製造と応用に広く使用されています。これには、家庭用製品、カーペット、織物、革製品、食品および飼料の包装における染み、油、水の抵抗性を付与する表面コーティング; パーソナルケア製品; 電気電子機器; 建築材料にも用いられています。PFOAと同様に、ワックス、カーペット、食品および飼料の包装に使用されるPFOSは、画像撮影装置や半導体の製造、フォトリソグラフィーや電気めっき、および絶縁体、染料、インクにも応用されています。また、水性膜形成泡として知られるB級消火泡の中でも用いられています。

PFOAおよびPFOSは、環境中に広く存在し、工業地帯や消防訓練エリア、廃棄物堆積地、汚染された廃水などの汚染源では高濃度に見られます。PFOAおよびPFOSは、特に魚介類や卵などの汚染された食品にも存在することがあります。職業的にばく露されている人口集団は、主に吸入により最も高いレベルのばく露を経験しています。汚染源の近くにないコミュニティの一般人口集団は、主に食事と飲料水を介してPFOAおよびPFOSにばく露されています。

国際、国内、および地域当局は、職場でのばく露、消費者製品での使用、環境媒介因子および飲料水のためのガイダンス値に関して、ますます厳格な制限を設けています。PFOAおよびPFOSは共に、持続性有機汚染物質に関するストックホルム条約にリストアップされています。このような努力により直接的なばく露が減少する可能性がありますが、PFOAおよびPFOSの前駆体の生産と使用が継続的なばく露に寄与する可能性があります。

IARCの作業グループは、実験動物におけるがんについての「十分な」証拠、ばく露されたヒトにおける発がん因子の重要な特徴を示すメカニズムについての「強い」証拠に基づき、PFOAを「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と評価しました。ヒトにおいては、精巣がんおよび腎細胞がんについての「限定的」な証拠がありました。PFOSは、メカニズムについての「強い」証拠に基づき、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない(グループ2B)」と評価しました。PFOSに関しては、実験動物におけるがんについての「限定的な」証拠、およびヒトにおけるがんについての「不十分な」証拠がありました。

モノグラフ Vol. 135についての詳細な情報は、以下のウェブサイトから入手可能です。
https://monographs.iarc.who.int/news-events/volume-135-perfluorooctanoic-acid-and-perfluorooctanesulfonic-acid/

なお、電磁界に関する発がんハザードの分類の変更はありません。

[JEICによる注記]
IARCは、化学物質や喫煙などに起因する発がんハザードの同定のための調査・研究と、がん対策を推進する機関です。

IARCによる発がんハザードの同定は、対象となる作用因子、例えば、物理的因子、化学的因子、特殊な環境因子等による定性的な評価(発がんハザードの証拠の確かさの程度)をグループ別に分類するものであり、定量的な評価(発がん性の強さ)をするものではありません。
IARCについての更に詳しい情報は、こちらをご覧下さい。
https://www.jeic-emf.jp/academic/international/iarc/

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