国際がん研究機関(IARC)が発がんハザードの同定についてのウェブサイトを更新(Volumes 1-136)
2024.7.8掲載
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、2024年7月5日付で「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフ」のウェブサイトの「IARCモノグラフで分類された因子」のページを更新しました。
https://monographs.iarc.who.int/agents-classified-by-the-iarc/
これは、「IARCモノグラフ Vol. 136:タルクおよびアクリロニトリル」の概要版の発表に伴うものです。
タルクは2006年に、アクリロニトリルは1998年に、それぞれIARCモノグラフ・プログラムで評価されています。
タルクは鉱物または合成タルク、水和マグネシウムシリケートとして定義され、層状および繊維状(アスベスト様を含む)形態のタルクが含まれます。アスベスト様タルクはアスベストではありませんが、一部のタルク鉱床にはアスベストが存在し、一部のタルク製品に汚染が確認されています。タルクは高生産量の鉱物であり、プラスチック、セラミックス、塗料、紙、屋根材、ゴム製品、動物飼料、食品、肥料、化粧品、医薬品に使用されています。また、臨床環境では胸膜癒着術にも使用されています。タルク粉塵への職業ばく露は主に鉱山と製粉中に発生し、主に吸入を介してですが、下流産業の労働者にも発生する可能性があります。一般公衆はタルクベースの消費者製品(例えばボディパウダー)を介してばく露する可能性があります。
アクリロニトリルは、主にポリマーのモノマーとして繊維、衣類、カーペットの製造、樹脂、合成ゴム、プラスチックの製造に使用される高生産量の化学物質です。職業ばく露は主に生産業において吸入および皮膚経路を通じて発生します。一般公衆の主なばく露源はたばこの煙です。
作業グループは、ヒトのがんについての「限定的な」証拠、実験動物におけるがんについての「十分な」証拠、およびヒト初代細胞と実験系での「強い」メカニズム的証拠に基づき、タルクを「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)」と評価しました。この評価は以前の「アスベストまたはアスベスト様繊維を含まないタルク」と「タルクベースのボディパウダーの会陰部使用」の分類に代わるものです。「アスベストを含むタルク」は再評価されておらず、「アスベスト」の中でグループ1の分類を維持しています。アクリロニトリルは、ヒトのがんについての「十分な」証拠、実験動物におけるがんについての「十分な」証拠、および実験系においてアクリロニトリルが発がん性の主要な特徴を示す「強い」メカニズム的証拠に基づき、「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」と評価されました。
モノグラフ Vol. 136についての詳細な情報は、以下のウェブサイトから入手可能です。
https://monographs.iarc.who.int/news-events/volume-136-talc-and-acrylonitrile/
なお、電磁界に関する発がんハザードの分類の変更はありません。
JEICによる注記
IARCは、化学物質や喫煙などに起因する発がんハザードの同定のための調査・研究と、がん対策を推進する機関です。
IARCによる発がんハザードの同定は、対象となる作用因子、例えば、物理的因子、化学的因子、特殊な環境因子等による定性的な評価(発がんハザードの証拠の確かさの程度)をグループ別に分類するものであり、定量的な評価(発がん性の強さ)をするものではありません。
IARCについての更に詳しい情報は、こちらをご覧下さい。
https://www.jeic-emf.jp/academic/international/iarc/