国際がん研究機関(IARC)が発がんハザードの同定についてのウェブサイトを更新(Volumes 1-137)
2024.12.5掲載
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、2024年11月29日付で「ヒトに対する発がんハザードの同定についてのIARCモノグラフ」のウェブサイトの「IARCモノグラフで分類された因子」のページを更新しました。
https://monographs.iarc.who.int/agents-classified-by-the-iarc/
これは、「IARCモノグラフ Vol. 137:ヒドロクロロチアジド、ボリコナゾール、およびタクロリムス」の概要版の発表に伴うものです。
ヒドロクロロチアジドおよびその他の光毒性薬は、2020~2024年のIARCモノグラフの優先事項を勧告する諮問グループによって高い優先度が与えられました。ヒドロクロロチアジドは、以前にIARCモノグラフVol. 50およびVol. 108で評価されました。ボリコナゾールとタクロリムスは今回初めて評価されました。
ヒドロクロロチアジドは、本態性高血圧症および末梢浮腫の治療に世界中で使用されている最も一般的な処方せん不要の経口チアジド系利尿薬です。ヒドロクロロチアジドは紫外線との相互作用により光毒性が生じます。
ボリコナゾールは、特に移植患者によく見られる侵襲性アスペルギルス症やその他の重篤な真菌感染症の治療または予防に使用される、広範囲のトリアゾール系薬剤です。主な代謝物であるボリコナゾールN-オキシドは光毒性があります。
タクロリムスは、経口および静脈内製剤で免疫抑制剤として用いられるカルシニューリン阻害剤であり、成人および小児の固形臓器移植の拒絶反応のリスクを軽減し、移植片対宿主病を予防します。タクロリムスの光毒性に関する情報はほとんどありません。
ヒドロクロロチアジド、ボリコナゾール、およびタクロリムスはいずれもWHOの必須医薬品モデルリストに記載されています。ヒドロクロロチアジド、ボリコナゾール、およびタクロリムスへの主なばく露は薬剤によるものです。
作業グループは各薬剤に対し、ヒトにおけるがんについての「十分な」証拠に基づき、ヒドロクロロチアジド、ボリコナゾール、およびタクロリムスを「ヒトに対して発がん性がある(グループ 1)」と評価しました。タクロリムスについては、実験動物における発がん性の「十分な」証拠と、ばく露をされたヒトにおける「強力な」メカニズムの証拠に基づいても、グループ1の評価に達しました。
モノグラフ Vol. 137についての詳細な情報は、以下のウェブサイトから入手可能です。
https://www.iarc.who.int/news-events/iarc-monographs-evaluation-of-the-carcinogenicity-of-hydrochlorothiazide-voriconazole-and-tacrolimus/
なお、電磁界に関する発がんハザードの分類の変更はありません。
JEICによる注記
IARCは、化学物質や喫煙などに起因する発がんハザードの同定のための調査・研究と、がん対策を推進する機関です。
IARCによる発がんハザードの同定は、対象となる作用因子、例えば、物理的因子、化学的因子、特殊な環境因子等による定性的な評価(発がんハザードの証拠の確かさの程度)をグループ別に分類するものであり、定量的な評価(発がん性の強さ)をするものではありません。
IARCについての更に詳しい情報は、こちらをご覧下さい。
https://www.jeic-emf.jp/academic/international/iarc/