フランス国立食品環境労働衛生安全庁(ANSES)が低周波電磁界の健康影響についての新たな評価報告を発表

2019.6.27掲載
2019.7.2更新

フランス国立食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は2019年6月21日、低周波電磁界へのばく露に関連した健康影響についての新たな評価報告を発表しました。この報告でANSESは、入手可能なデータに照らして、低周波電磁界へのばく露と小児白血病の長期的なリスクとの間にあるかも知れない関連についての2010年の結論、ならびに超高圧送電線の近くに学校を新設しないという勧告を繰り返しています。またANSESは、労働者が高いレベルの電磁界にばく露される可能性のある特定の職場における、特に妊婦のばく露のより良い管理の必要性を強調しています。

ANSESは2010年、疫学研究が、小児白血病の発生と0.2 μTまたは0.4 μTより高いレベルの低周波磁界へのばく露との関連を示す方向に収束していることを強調しました。ANSESは、2010年以降に発表された研究では、小児白血病の長期的な影響についての関連が見られる頻度はより低くなっているものの、「限定的な」証拠があることを確認しました。

今回の評価の一環としてANSESは、高圧送電線から発せられる高いレベルの低周波磁界にばく露されるフランス国民、特に子どもの割合を定量化する研究を助成しました。国立保健医学研究所(INSERM)及びカーン大学病院のチームが実施したこの研究では、15歳以下の子ども約4万人(人口集団の0.35%)が自宅で0.4 μTを超える磁界にばく露され、子ども約8千人(0.18%)が0.4 μTを超える磁界レベルの学校に通学していることがわかりました。

これらの結果に鑑みて、ANSESは、念のための対策(precaution)として、感受性の高い人々を受け入れる施設(病院、学校等)を超高圧送電線の近傍に新設しないこと、そのような施設の上に送電線を新設しないことも勧告しています。

ANSESはまた、現行の規制は送配電線の近くでのばく露レベルを限度値に適合させることしか規制していないことから、この規制を一般公衆がばく露される電磁界の全ての発生源に拡張することを勧告しています。

国立安全研究所(INRS)及び年金労働衛生保険基金(CARSAT)による共同研究によると、一部の職種、特にある種の産業用機械を用いるような状況では、ばく露限度値(50 Hzで1000 μT)を超える非常に高いレベルの磁界にばく露される潜在的可能性があることがわかりました。

このためANSESは、労働衛生及び過剰ばく露の低減についての規制を施行することの重要性を協調しています。また、低周波電磁界を発する産業用機械の製造者に対し、その使用に関連したばく露を測定し、顧客及び使用者向けの技術文書に明記することを勧告しています。

更に、職場で遭遇する可能性のある高いレベルのばく露では、生物学的影響(酸化ストレス、遺伝毒性作用、細胞生理学への影響)が生じるかも知れないことが、実験研究で示されています。但しANSESは、疫学研究には一貫性がなく、電磁界への職業的ばく露と慢性疾患、特に神経変性疾患及び神経系の腫瘍の発生とのつながりを確立することはできない、としています。このため、低周波磁界へのばく露に関連した病理が生じるかも知れないリスクについて、研究の継続が必要であるとしています。加えて、ばく露限度値の次の再評価では、最新の科学的証拠を考慮にいれることを勧告しています。

ANSESは、妊婦の職場でのばく露に留意しています。実際に、ある種の職業的ばく露シナリオでは、胎児の誘導電流密度は一般公衆に対して勧告されている限度値よりも高い可能性があることが示されています。このためANSESは、低周波電磁界への胎児のばく露を制限するため、女性向けのより良い情報提供と、妊娠の際の職場を管理する規制についての意識向上を勧告しています。

この評価報告の原文(フランス語)、ならびに要旨(英語)は、それぞれ以下のURLで確認することができます。
原文(フランス語):
https://www.anses.fr/fr/content/effets-sanitaires-li%C3%A9s-%C3%A0-l%E2%80%99exposition-aux-champs-%C3%A9lectromagn%C3%A9tiques-basses-fr%C3%A9quences
要旨(英語):
https://www.anses.fr/en/system/files/AP2013SA0038EN.pdf

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