電磁界とは何か?

定義と発生源

電界は電位の差(電圧)があると発生します。電圧が高いほど生じる電界は強くなります。磁界は電流が流れると発生します。電流が大きいほど磁界は強くなります。電界はたとえ電流が流れていなくても存在します。電流が流れている状態では、磁界の強さは電力消費量に応じて変化しますが、電界の強さは一定で変わりません。

WHOヨーロッパ地域局が1999年に発行した『電磁界』からの抜粋
(地方当局、健康と環境に関する説明用パンフレットシリーズ32)

自然界の電磁界発生源

電磁界は私たちが暮らす環境のあらゆるところに存在していますが、私たちの目には見えません。電界は大気中の局所に電荷が集積すると発生し、雷雨を伴います。コンパスの針は地球の磁界によってつねに南北方向に向くのであり、鳥や魚もそれを利用して移動します。

人工的な電磁界発生源

自然界の発生源に加え、電磁スペクトルには人工的発生源が作り出した電磁界も含まれています。スポーツ事故での手や足の骨折はX線を使用して診断します。電源ソケットから送られる電気は低周波の電磁界をともなっています。さまざまな種類の高周波の電波は、たとえばTVのアンテナ、ラジオ局、携帯電話基地局を経た情報の送信に利用されています

波長と周波数の基礎

電磁界のさまざまな形態によって性質か異なるのはなぜか?

電磁界(EMF)を定義する基本的な特性の1つは周波数とそれに対応する波長です。電磁界は、周波数が異なれば身体に対する相互作用の生じ方が異なります。電磁波というと、光速というとてつもない速さで進む、きわめて規則的な一連の波を想像すると思います。周波数とは1秒間の振動数またはサイクル数をそのまま表したもので、波長とはある波と次の波の間の距離です。したがって波長と周波数に密接に関連しており、周波数が高くなれば波長は短くなります。

こうした概念を説明するには、次のような簡単なたとえが役に立つかもしれません。長いロープの一端をドアの取っ手に結び、もう一方の端はそのままにしておきます。結んでいない端をもってゆっくり上下に振ると、大きな1つの波が作られます。振る動作を速くすると、小さな波がたくさん作られます。ロープの長さは一定なので、作られる波の数が増えれば(周波数が高くなると) 、波と波の間の距離は短くなります(波長は短くなる)。

非電離の電磁界と電離放射線の違いは何か?

波長と周波数は、電磁界のもう1つの重要な特性を決定します。電磁波を運ぶのは、量子と呼ばれる粒子です。高周波(短い波長) の電磁波の量子は、低周波(長い波長)の電磁界の量子よりも大きなエネルギーを運びます。電磁波の中には、分子間の結合を破壊できるほど量子当たりのエネルギー量が非常に大きいものがあります。電磁スペクトルの中で、放射性物質が発するガンマ線、宇宙線、X線にこの性質があり、これらを「電離放射線」と呼びます。一方、量子が分子結合を破壊できるではない電磁界を「非電離放射線」と呼びます。工業化社会の生活の大きな構成要素である電力、マイクロ波、無線周波電磁界などの人工的な電磁界発生源は、電磁スペクトルの相対的に波長が長く、周波数が低い側の端にあり、その量子は化学結合を破壊することはできません。

低周波の電磁界

正または負の電荷が存在するならば、必ず電界が現れます。電界は、その電界内の他の電荷に力を及ぼします。電界の強さはメートル当たりのボルト(V/m) の単位で測定します。帯電した電線はそれに応じた電界を発生します。この電界はたとえ電流が流れていなくても現れます。電圧が高くなるほど、電線から一定距離の電界は強くなります。

電界は、電荷や帯電した導体の直近で最も強く、離れるにつれ急激に弱くなります。金属などの導体は電界をとても効果的に遮蔽することができます。建材や樹木などの物質にもある程度の遮蔽能力があります。したがって家の外にある電力線の電界は、壁、建物、樹木によって弱められています。電力線を地下に埋設すると、地表の電界はほとんど検知できないほど微弱になります。

磁界は電荷の運動によって発生します。磁界の強さはメートル当たりのアンペア(A/m) の単位で測定します。ただし電磁界研究で科学者はA/mの代わりにその関連物理量である磁束密度(単位:マイクロテスラ µT) を使用します。磁界は電界と対照的に、電気機器にスイッチを入れて電流が流れている時しか発生しません。その電流が大きいほど磁界の強さは大きくなります。

磁界も電界と同様、発生源の直近で最も強く、発生源から離れるにつれ急激に弱くなります。磁界は、建物の壁など一般的な物質では遮蔽できません。

電界

  • 電界は電圧によって発生します。
  • 電界の強さはメートル当たりのボルト(V/m)の単位で測定します。
  • 電界は電気機器のスイッチをオフにした状態でも発生しています。
  • 電界の強さは発生源から離れれば弱まります。
  • ほとんどの建材は電界をある程度遮蔽します。

磁界

  • 磁界は電流の流れによって発生します。
  • 磁界の強さはメートル当たりのアンペア(A/m)の単位で測定します。ただしEMFの研究者は一般的に、その関連尺度である磁束密度(マイクロテスラµT、またはミリテスラ mT) を用います。
  • 磁界は電気機器のスイッチをオンにして電流が流れると同時に発生します。
  • 磁界の強さは発生源から離れれば弱まります。
  • ほとんどの物質は磁界を弱めることはできません。

静的な電磁界と時間変化する電磁界はどこが違うのか?

静的な電磁界は時間が経っても変化しません。直流電流(DC)は一方向にだけ流れる電流です。 電池を電源とする電気機器では、電流は電池から電気機器に流れまた電池に戻ります。 この電流の流れが静的な磁界を作り出します。地磁気も静的な磁界です。 したがって棒磁石の周囲の磁界は、鉄粉を磁石の回りに撒き、それが作り出す形を見れば目で確認することができます。

対照的に、時間変化する電磁界は交流電流(AC)によって生じます。交流電流は一定の間隔で電流の向きを変えます。 ヨーロッパ諸国のほとんどでは、電気は1秒間に50サイクル、つまり50ヘルツの周波数で向きを変えます。 それと一緒に電磁界は万遍なく毎秒50回向きを変えます。北米の電気の周波数は60ヘルツです。

低周波、中間周波、高周波の電磁界の主な発生源は何か?

電気機器から発生する時間変化する電磁界は、超低周波(ELF)電磁界の一例です。ELF電磁界の周波数は一般に300Hzまでです。その他の技術は、 周波数300Hz~10MHzの中間周波(IF)電磁界や、周波数10MHz~300GHzの無線周波(RF)電磁界を発生します。電磁界が人体に及ぼす作用は、 電磁界のレベルだけでなく、その周波数やエネルギーによっても異なります。ELF電磁界の主な発生源は、電力供給とその電力を使用するすべての電気機器です。 IF電磁界の主な発生源は、コンピュータ画面、盗難防止装置、セキュリティシステムです。RF電磁界の主な発生源は、ラジオ、テレビ、レーダ、携帯電話のアンテナ、電子レンジです。 このような電磁界は人体に電流を誘導します。その電磁界が十分に強ければ、その振幅と周波数範囲に応じて加熱や電気ショックといった一連の作用を生じます。 (ただしそのような作用を生じるには、身体の外側の電磁界が通常の環境でのレベルをはるかに超えたきわめて強いものである必要があります。)

高周波の電磁界

携帯電話、テレビ、無線送信機、レーダはRF電磁界を発生します。このような電磁界は情報の長距離送信に利用され、無線通信や世界中のテレビ・ラジオ放送の根幹をなしています。マイクロ波はGHzという高い周波数のRF電磁界です。食品を素早く加熱するために、私たちは電子レンジにこのような電磁界を利用しています。 無線周波では電界と磁界が互いに密接に関係しているので、そのレベルの測定には平方メートル当たりのワット(W/m2) を単位とする電力密度を用いるのが普通です。

キーポイント

  • 電磁スペクトルは電磁界の自然発生源と人工的発生源の両方を網羅しています。
  • 周波数と波長で電磁界の特性は決まります。電磁波ではこの2つの特性が互いに直接関連し合い、周波数が高くなると波長は短くなります。
  • X線やガンマ線などの電離放射線は、分子結合を破壊できるだけのエネルギーを持った光子からできています。電力周波や無線周波の電磁波の光子はそれよりはるかにエネルギーが低く、分子結合を破壊する力はありません。
  • 電界は電荷が存在すれば必ず存在し、その測定はメートル当たりのボルト(V/m) の単位で行います。磁界は電流の流れによって発生します。磁界の磁束密度はマイクロテスラ(µT) かミリテスラ(mT) の単位でで測定します。
  • 無線周波やマイクロ波の周波数では、電界と磁界は電磁波の2つの成分としてまとめて考えます。平方メートル当たりのワット(W/m2) を単位として測定する電力密度は、このような電磁界の強度を表しまです。
  • 低周波と高周波の電磁波は、人体にそれぞれ異なる作用を及ぼします。
  • 生活環境における低周波の電界及び磁界の最も一般的な発生源は、電力供給と電気機器です。無線周波の電磁界の日常生活での発生源は、無線通信、放送アンテナ、電子レンジです。

参考:WHO 国際電磁界プロジェクトHP

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