国際がん研究機関(IARC)が「世界がん報告」の2020年版を発表

2020.2.5掲載

国際がん研究機関(IARC)は、「世界がんの日」の20周年にあたる2020年2月4日、「世界がん報告:がん防止のためのがん研究」の2020年版を発表しました。
「世界がん報告」は、がんの防止(prevention)に焦点を当てた、病因学、細胞・分子生物学、毒性学、病理学から行動学及び社会科学までの、入手可能な最新の関連研究の最も包括的な概観を提供するものです。これには、がんにおける不平等のインパクト、ワクチン接種、スクリーニング、がんに対するゲノムの個々の感受性、リスクにあるゲノムのより詳細な特定、について検討した重要な章が含まれており、これらは「精緻ながん防止」を可能にし得るものです。

この報告は、無線周波(RF)電磁界について以下のように述べています。
(超低周波(ELF)電磁界についての記述はありません。)


2.5節 電離放射線及び無線周波電磁界:特定のリスクの更なる明確化

要約:
  • 大半の疫学研究は、携帯電話使用と、無線周波電磁界へのばく露が最も高い身体の部位である頭部に生じる腫瘍との関連を支持していません。正の関連[ばく露の増加に伴うがんの増加]を報告している研究では、過去に遡ったばく露評価における想起バイアス等の各種のバイアス[偏り]を排除することが困難です。
基礎的項目:
  • 大半の無線周波電磁界ばく露は、自身の携帯電話通話から生じるため、頭部が最もばく露される部位です。
  • これまでに相当の研究が実施されているものの、無線周波電磁界の発がん性に関連するメカニズムは一貫性をもって特定されていません。また、大半の疫学研究は、無線周波電磁界の発がん性を示していません。このことは、検出されていない可能性のあるリスクは、個々人の観点からは小さいと見込まれることをほのめかしています。

5.17節 脳腫瘍:免疫応答に対する関心の高まり

要約:
  • 携帯電話と脳腫瘍についてのトピックについては、数十年間にわたる研究と、多数の観察研究の結果があるものの、依然として議論の余地があります。一部の研究は、携帯電話のヘビーユーズについての高い相対リスクを報告していますが、悪性腫瘍の発生率は過去30年間で上昇していません。

6.8節 発がん因子へのばく露の制御のための政府の措置:多様なシナリオをカバーする多くの選択肢

携帯電話:
子どもの健康についての懸念は、携帯電話からのばく露低減のための幾つかの措置において明白です。子どもは成人と比較して、脳のより近くで携帯電話を保持し、また子どもの頭蓋の骨及び骨髄は導電率がより高いです。携帯電話からの無線周波電磁界は、神経膠腫及び聴神経鞘腫との正の関連から、IARCモノグラフで「ヒトに対して発がん性があるかも知れない(グループ2B)」に分類されています。
携帯電話使用についての規制は、ほとんどが自動車運転中の注意散漫を低減することを意図していますが、一部の保健機関は、IARCモノグラフの知見を引用して、あるかも知れないがんリスクへの対策を講じています。ベルギーは2014年以降、7歳未満の子ども向けにデザインされた販売及び広告を禁止し、販売業者に携帯電話の比吸収率についての情報開示を求めています。米国カリフォルニア州は2017年、携帯電話からのばく露低減のためのガイダンスを発出しました。

「世界がん報告」の2020年版は、以下のURLから入手可能です。
https://www.iarc.fr/news-events/iarc-launches-new-world-cancer-report-on-20th-anniversary-of-world-cancer-day/

関連情報:
「国際がん研究機関(IARC)の『世界がん報告2014』発行」(2014.2.21掲載 )
https://www.jeic-emf.jp/academic/info/20140221.html
「ベルギーで携帯電話の販売および広告に関する王令を告示」(2013.9.20掲載)
https://www.jeic-emf.jp/academic/info/20130920.html
「カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)が携帯電話からのばく露低減についてのガイダンスを発表」(2018.1.9掲載 )
https://www.jeic-emf.jp/academic/info/6059.html

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